Kitahama Alley
Story
Kagawa-Takamatsu
Since 2001.
倉庫再生へのプロローグ
港街特有の汐と機械油の匂いを含んだ風に吹かれて、北浜の倉庫街を幾度も歩くうちに世界中のウォーターフロントが商業界隈として成功する前の原風景に出会ったようなきがした。
ロサンゼルスのフィッシャーマンズワーフ、ニューヨークのピア17、ボストンのファニエルホールマーケットプレスも、もとは街の賑わいから取り残された人気の無い場所としての認識しかなかった。
この北浜の倉庫街も都市の歴史を語る重要な商業界隈として再生する可能性がある。
そう感じたことが北浜アリーのはじまりでした。
2つのウォーターフロント。
サンポート高松を新しいウォーターフロントと
据えるならば北浜は港町の歴史が語られる
フューマンサイズのウォーターフロントです。
シンボルは街のメッセージ。
シンボルは街に人を引き付ける手掛かり。
そして心になじんだ記憶がシンボルになる。世界から自然と伝統が消え失せようとしている今、あらためて見直されているのがこのジャンルのシンボルです。
伝統の保存には難しい問題があります。
経済、後継者の問題。
しかし、その伝統が町のシンボルになりえたら、それを求めてくる人々が増え、保存の問題も解決されるのです。
倉庫は若者の身の丈に合う。
何もかも満たされて自分たちの手のだしようの無いほどに
経済成長を遂げた日本は若者にとって崩しがたい壁。
今、若者たちがアジアの街に憧れを持って出かけていく背景には
アジアに街が持っている人間の温かさ、
カジュアルな暮らしが教えてくれる自由な考え、大地と海の恩恵。
しかし、もっと探れば自分の夢を実現できそうなかたまりきっていない経済機構。
自分たちのイマジネーションを実現させ得る
身の丈の世界をアジアに見るからではないだろうか。
なぜ倉庫がおもしろい?
ノスタルジーとチープさが醸しだす手作り感が、人々の気持ちをワクワクさせ、
ライブ感覚に満ちた産業空間を形成する。
「失われた時代への郷愁、子供たちに伝えたいヒューマンサイズな生き方」
文化的情報の発信が商業施設に付加価値を与える。
海運業からイメージする異国への憧れ、海辺の解放感などリゾートの空気に満ちている。
北浜JA倉庫の開発を思い立ったのは誰に頼まれたからでもなく、私たちの商業施設の設計に携わる者にとっての前々からの夢でした。
きっかけはある会合で若い女性(学生)の一言があったことです。
「高松にも、広くていろんな遊びが出来る店があったら」そんな若者の気持ちを表現できる場所が北浜の倉庫群だったのです。
私たちの想いを盛り込んだプランをJA香川県に持ち込んだところ、とんとん拍子で話が進んでいきました。
建築法をのすり合わせには一苦労ありましたが、当初はこんなに寂れた場所で商売が成り立つのだろうかと心配された年配の方々もおられましたが、
この隙間だらけの倉庫の外観と各テナントのおしゃれな持ち味が格別な雰囲気を作り出し、瞬くうちに高松の商業観光地として郷愁を漂わせながらも潮風に強く向き合っていく場所でありたいと願っています。
井上商環設計株式会社 井上秀美・井上雅子